少しでも興味を持っていたら、
是非学会発表はやってみてほしいです。

言語聴覚士 安川
株式会社東京リハビリテーションサービス 人財育成教育課責任者


Q. 入社のきっかけを教えてください

前職は亜急性期病棟と慢性期の方が一緒になっているような病院で回復期病棟の立ち上げ時に入職し、最終的には療法士部門の主任まで務めました。転職を考えたきっかけは、学生時代のOTの友人に以前から在宅リハの面白さは聞いていて、いつかやってみたいと思っていたものの、病院でも責任があるポストについていたのでなかなか辞めるには至らず、その頃は東京にも目立った訪問看護ステーションはなくて。
それからしばらくして、東京リハの立ち上げの話を聞き、いいきっかけかと思い、入職を決意しました。

Q 言語聴覚士(以下、ST)になる前は?

最初は旅行代理店に就職しました。旅行が好きで、好きなものに携わりたいと思って入ったのに、人の旅行の斡旋ばかりで自分は旅行をできないことから次第にやりがいを感じられなくなりました。
辞めることを決めた時に、子供のころはレントゲン技師になりたいと思っていたことを思い出して。仲良しの友達の親が看護師で、学校帰りに病院に寄って鍵をもらいに行っていたから病院によく出入りしていて、そこで目に止まったんだと思います。そういえば医療系に進みたいと思っていたな、と友人に相談したら、リハビリはどう?と言われたんです。
でも前職のこともあるし、本当に自分に合うかどうか決めてから進みたい。と思い、病院の看護助手のアルバイトとして入ることにしました。

当時自分はリハビリ=PTと思っていました。見えるところがそこだけだったから。ある日看護師長に「言語聴覚士になるつもりはないの?」と言われ、何だそれは?と。当時二十代後半。大学を出ているという経歴もあり、「言語聴覚士がいいと思う」と言われ、3冊くらい本を貸してもらいました。読んでみて、興味をもって。看護師長に「あの部屋でやっているのがそうだよ」と聞いて、リハ室に行った時に見たら、確かにあった。言語聴覚療法課の主任に見学させていただいて、存在を知ったんです。

Q. その方が居なかったら?

STではなく、PTになっていたかもしれないですね。その看護師長は学校も紹介してくださいました。卒業後は別の病院に就職したので、その看護師長さんは自分の損得なく、自分をSTに導いてくださっただけ。ナイチンゲール精神ですよね。

ある時、病棟で塞ぎこんでいる失語症の患者さんが居たんです。「どうしたの?」と聞くと、泣いてしまった。ちょっと前まで家族が来て楽しそうにしていたのに、帰ってさみしいのかな、と声をかけたりしても泣くばかりでした。

その時主任に教えていただいたのは、身体のリハビリは、療法士や家族に「今日は良かったね」と言われたい、心配かけさせたくないなどの理由でみんな実力以上に頑張る。でも家族がいなくなると、その時に無理した反動が出てしまう方も多いということ。精神的な動きを汲み取ることも言語聴覚士の重要な仕事なんだよ、と言われて「STでいこう」と思いました。

Q. 病院と訪問を経験されていますが、どういった違いがありますか?

患者さん・利用者様、ご家族の求めるものは、言語領域に関しては病院と在宅であまり差がないように感じます。PT、OTなどの身体的なことは違い、言葉に関しては病院と同じことを求めることが多いなという印象です。機能的な部分が気になるのかなと思います。

考え方としてはPT、OTと同様に、病院で残存機能を引き出し、在宅ではどのようにコミュニケーションを取っていくか具体的な代替手段も提案して、適応能力をつけていかなければならないのですが、理想と現実の差がありますね。

立つ、歩く、トイレ、お風呂などのADLに比べて、言葉はQOLの方、生活の質と考える方が多いです。
大多数の人は家に帰って、歩いて自分でトイレに行ければ良い。他人に迷惑かけずに生きられれば良い。というような。

Q. 利用者さんからの希望がなければ、こちらから介入を提案することは無いのでしょうか?

病院でも言語聴覚士は数が少ないので、言語療法が入らないことも少なくないのですが、まずその人にとって必要かそうでないかを評価するという段階をふむことができます。
在宅はご依頼がないとまず入れないですね。本人・家族の希望がないと。ケアマネジャーからサービスを勧められることもありますが、実際に行ってみても、ご本人の意思が全く無い状況では介入が難しいですね。

Q. 病院と訪問の違いは他にありますか?

移動がこんなにしんどいと思わなかったです(笑)病院ではお迎えする側だったので、「行く」という行為がこんなに疲れるとは思っていませんでした。暑かったり、寒かったりというのもあるし。STは必要な物品が多いので余計に、工夫が要ります。
今は会社から支給されるiPadがあるから良くなったけど、それでも荷物が多いです。評価バッテリー(検査道具)がA4サイズのものが多いので、タブレットは大きめのiPadにしてもらっています。(ST以外のスタッフはiPad-miniを貸与)

また、病院では退院時指導やサマリーを作って、在宅でこうやってくださいね、と必ず伝えているのですが、実際に訪問してみると「やっていない」、ご家族も「知らなかった。」「聞いていない」ということが多くて。どうなってるの?と最初は思いました。

Q. 退院後はホッとしたりで忘れてしまうんでしょうか

重要度がわからなかったりするのかな。と。
胃ろうで自宅に帰る人でも、食べることができる人も居て。口腔内は自浄作用があるのですが、日常的に使っていないと雑菌が繁殖してしまうので、誤嚥性肺炎を予防する意味でも、摂食はしたほうが良い場合があるんです。でもご家族の介助量が増えるという理由で口からの摂食をあきらめてしまったり…。
在宅っていろいろあるなと思いました。STの本領を100%発揮するだけではないのだなと思いました。

病院に居るときは、医療職が様子を見て必要と思ったらすぐ提案することができますが、在宅では問題が発見されないことで放置されることもありますし、ご家族の負担というのも理由の一つにありますね。包括的な繋がりが必要だなと感じます。

Q. 人材教育課の業務との臨床の兼務についていかがですか

リハビリの業務は自分の専門性を発揮しているという点でやりがいは感じているので、自分の中で訪問業務を無くしたくはないと思っています。その反面、教育の業務のウエイトが増えてきていて、なかなか担当は増やして持てない状況です。

実習生の症例発表などで、現場をバリバリやっている療法士からの的確な質疑や指摘を聞いていると、羨ましいなと思います。(笑)現場を離れると普段使わない言葉や表現を忘れてしまう。それを「思い出す」自分が嫌。なんか違ってきたな~と。このままじゃイカンと思い、テキストを読んでみようかなと思ったり。今は「メディカルオンライン」※1があるから、文献を読めるので。

※1:メディカルオンライン:医学文献の検索、閲覧や医療機器、医薬品の情報を得ることができる医療職向けの会員制サイト。弊社では平成30年から契約し、社内スタッフが利用できる体制を整えています。

Q. 教育課は、療法士だけでなく全スタッフの教育ですが大変なことはありますか?

考え方は「会社としての基本的な質の担保」なので、職種からの違和感は無いですね。一歩踏み込んだ、専門分野では全然違うので、そこは自分一人ではできないので教育課の中でできる人をチョイスして運営していかないと。束ねるというとおこがましいですが。基礎的なサービスの質を担保するという点では職種関係なくできるのではないか。と思います。

社内それぞれの拠点での勉強会も活発になってきていますね。

『エリア別症例勉強会』は自分が教育課になるまではやっていなかったのですが、新卒の療法士は特に、研修期間が終わると心配があったり、出来てないことがある人ほど他の人に相談できないことが多くて。
訪問は、同行でもしないと抱えている問題がわからない。それを周りが発見するため、日常の手順を開示してもらい、不具合の発見を早めに行うことが重要です。
経験年数が少ない人から順に、経験年数があるベテランの方にも同様に行っていただいています。

まとめるのに時間がかかるから、忙しいのにこんな時間をとれないという人は辞めてしまってもいいと思っています(笑)
色々言われたらどうしようと思う人は自分の未熟さを感じているということなので、他人からの意見を聞き入れる余地があって、絶対に伸びると思います。

同じ職種からは、現実的な意見をいただける。他職種からは自分が普段見られない部分からの意見を聞くことができて、貴重な場だと思います。受け身になるのは仕方ないですが、自分にいい意見をもらえるチャンスというスタンスで居てほしいですね。

Q. 学会への参加奨励や「東京リハ学会」の開催など、ここ数年スタッフは「学会」を身近に感じるようになったのでは、と感じますが。

前の職場では学会が大嫌いだったんですよ(笑)その頃のリハ課長が学会大好きで。全く賛同できなかった。毛嫌いしていたんだと思います。それが、やってみた時に、達成感など得られるものが多かったんです。周りの反応や自分の中での満足感も高かった。みんなにも是非やってみて、と思えるようになりました。

昨年は育児のため時短で働くスタッフが学会発表を行ったことに驚かされました。

本当にこれはモチベーションの違いで、病院に居て忙しいからできない、在宅に来てみたけど忙しいからできないという人はどこに行ったってできないだろうと思うんです。(発表した)ご本人は、本当に頑張っていたと思います。その結果、自分の中で達成感を得られたんだろうなと思います。

自己肯定感もあがるし、経験年数分の知識を持てていただんだと感じたり、他の病院やステーションでは今どういったことをやっているかという情報収集にもなる。是非興味を少しでも持っている人がいたら、学会発表はやってみてほしいですね。

この会社では、やりたいと思ったらなんでもできる。他のステーションではできないことがやりやすい状況で、とくに何かをやりたい!と思っている人には恵まれた環境だと思います。

Q. 今後の目標を教えて下さい。

臨床と後進育成は前の病院でもやっていたけど、研究はここ2年くらいではじめて、面白さを感じているんです。展望というほどでもないけど、色々な可能性の扉があるなと。ちょこちょこ執筆の依頼もいただいて、年一回くらい依頼をいただいている状況です。

去年これ(写真)を書いたんですが、その記事を見て、「依頼したいことがある」とご連絡いただいたりと、反応が返ってくるというのが面白いですね。ご依頼をいただいたものは執筆活動に限らず講師なども、極力やっていきたいと思っています。

ありがとうございました。

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